バンバンバザール年代記

 バンバンに歴史あり!
 と言っても、僕が並行して知っているのは1994〜1995年くらいから。当時の仕事の兼ね合いもあって、CDを聴き倒す時期からライブハウスに行けるようになるまでには、さらにタイムラグがあった。だから、インディーズ時代のバンバンを全部知っているわけではないし、メンバーの全てについて事細かに語られるわけでもない。
 でも、それでも僕なりに、客席から見えたり聞こえたりしたバンバンの歴史と感想(とその間にあったであろう推測)をまとめてみようと思う。
 バンバンもメジャーデビューしたことだし、20世紀も終わって新世紀に突入する(した)ことだし、振り返ったりまとめたりするのに向いている時節だと思うのだ。
 ここにまとめられたことは事実とは違うかもしれないし、やまれぬ事情があったり、まったく違う理由だったりすることもあるだろう。詳しい人がいたら教えてほしいし、できるだけ史実に近づけたいなあ、とも思う。
 ただし、これはあくまでも客席の立場から。僕らは楽屋には入れないし、バンドの事情もわからない。だから、ライブで聞いた、CDのブックレットを読んだ、紹介されているホームページや、雑誌のインタビューなど、わかるところまでしかわからないけれど、それでも大好きなバンバンバザールについて、いろいろ思ってみたりするのだ。

 

〜1990黎明期

 

福島(Vo.,Gt)、南(B)を中心にバンバンが結成される。
福島、南が大学の同級生で、これに安達孝之が加わる。バンド結成時に安達は初めてバンジョーを、南は初めてベースを触ったという話がある。ホントかなぁ(^^;)

〜1992

路上と
テープの時代

2ndアルバム「できました」の初回特典に付いてきたテープは、この時期に収録されたものらしい。福島の声も若い。風呂屋という曲は、このころにはすでにあったようだ。アレンジなどを聞いてみると、音的には粗さがあるものの、すでにホーンセクションを交えたビッグバンド的なものを志向していたのではないか?と思われる。このテープにはまだ安藤、杉原、花野の名前は見あたらない。
時期的にはテープの他、ストリートでの度胸付けを敢行し始めた時期ではないかと思う。

〜1993

路上の時代

吾妻光良との路上での出会い(リサイクルより)はこの時期。たぶん、この頃にはリサイクルのときのメンバー構成に近づいていたと思う。

〜1994

リサイクル(1st)

福島(Vo.,A.Gt)、南(B)、安達(Banjo)、安藤(Cr)、杉原(E.Gt)、花野(Piano)の6人構成で「バンバンバザール」を名乗り、1stアルバムが収録される。リサイクルはライブ盤で、「日本語でジャズのスタンダードナンバーを歌う(福島)」というバンバンの初期のスタイルが現れている。
「うまい音楽」ではなく「音楽を楽しんでいる」というバンバンのスタイルは、ここですでに明確になっている。
この時期は、少なくともまだ「デブ度0%」だった。南、安藤ともに今よりずっと痩せていた(!)

このアルバムの後、花野が脱退。
ずいぶん後に野方のライブハウスで「結婚のため円満退社しました(福島)」と聞いた。

〜1995

できました(2nd)

福島(Vo.,A.Gt)、南(B)、安達(Banjo)、安藤(Cr)、杉原(E.Gt)の5人構成になる。
初回特典で前述のテープの他にサイン入りポスターが付いたのだが、ここではすでに花野の姿はない。
ジャズのスタンダードナンバーを日本語で、というスタイルは変わらず。同時期、エージ&テツや藤井康一のバックに入っていたりと、交流が増えている。

〜1997

歌は廻る(3rd)

杉原が脱退。福島(Vo.,Gt)、南(B)、安達(Banjo)、安藤(Cr)の4人構成になる。この3rdアルバムはカバー中心になっており、オールドナンバーも盛りだくさん。
杉原脱退、アルバムリリースの後、武田栄(Dr)が加入、リズムセクションが強化される。が、リードギターの杉原が脱退したことによって、これより後、安達がエレキギターをも担当することになる。
アコースティック色が強い構成はこのアルバムまでで、これ以降はゆったりしたオールドジャズ/ジャイヴから、スピード感のあるジャンプなスタイルへの移行が進む。杉原脱退の原因はケンカ別れとも自主退部とも……。ただ、「音楽で飯を食っていくか否か!?」という命題が原因であったとも言われるが、本当のところは不明。

〜1998

4(4th)

福島(Vo.E.Gt)、南(B)、安達(Banjo,E.Gt)、安藤(Cr,T.Sax)、武田(Dr)のバンバンバザールに、デビルズホーン(HornSection)+YANCY(Piano)を加えたビッグバンド構成のバンバンデラックスの色が強まる。それまでのジャズ・ジャイブ的な色合いから、ジャンプ・ジャングルへの志向が一気に強まった。ハワイアンもしくはラテンなノリが強く出ているのは、1920年代スタンダードジャズから、1940〜1950年代の音楽にスライドしつつあるからか。3rdまでのファンにとっては意外かもしれないが、1992年の福島の志向が、やっと形になったというのが正解なのかもしれない。
この時期、安達がリードギターを、安藤がテナーサックスを使う曲が増える。

そうそう。南がカーリーヘアになったのは確かこのころじゃなかったかと……(^^;)

〜2000

HIGHLIGHT(5th)

福島(Vo.E.Gt)、南(B)、安達(Banjo,E.Gt)、安藤(Cr,T.Sax)、武田(Dr)のバンバンバザールに、友部正人、吾妻光良、デビルズホーン、YANCYなどがゲストで加わったライブ盤として収録される。

このアルバムのリリース後、安達が脱退。
おそらく、この前後にメジャーへの誘いがあったのではないだろうか。メジャーに進むためにはギターの強化が必要だ。
結果として、この後、富永(E.Gt)が加入することになるのだが、安達の脱退によってバンバンバザールからバンジョーが消える。バンジョーのストリングス音が消えたことによって、バンバンの音はアコースティックでちょっぴりチープなジャイヴから脱皮を果たし、ジャンプ&ジャングルな方向への志向をさらに強めていく。個人的な思いを付け加えるなら、リードギター富永を加えた上で、バンジョー安達も残して欲しかったと思うのだが、やはり事情があったのだと思う。いつか知りたいものだ。

〜2000.8

新宿駅で待ってた
(IndiesMaxi)

福島(Vo.E.Gt)、南(B)、安藤(Cr,T.Sax)、武田(Dr)、富永(E.Gt)の構成で出した最初のMAXIシングル。インディーズ盤はこれが最後となる。
新宿駅で待ってたそのものはリサイクルにも収録されている曲で、「10年以上前の曲(福島)」ということだ。だとすると、やはり今の方向は目新しい最近になってから出てきた方向ではなく、当初やりたかった音にどんどん近づいてきた結果なのかな、とも思う。

カップリング収録のシカーダ君のこと僕のことは福島ちっくだけど、これまでのどの曲よりもうまくて現代的。たぶん、富永のギターがあってこそ生きている曲だろうと思う。とってもうまい。
が、うまいけど平凡という印象が少しだけある。荒削りさがなくなってきたことは喜ばしいことだ。綺麗な音が聞けるのもいいことだ。ただ、なんとなく、よくあるうまいバンドの中に埋もれて消えていってしまいそうな、そういう気もしなくもない。バンバンが妙に心に残ってきたのは、何によるものだったんだろう?

〜2000.11.22

新宿駅で待ってた(完全盤)
(Major)

TV番組「年中夢中!コンビニ宴ス」のエンディングテーマでメジャーデビュー。福島(Vo.E.Gt)、南(B)、安藤(Cr,T.Sax)、武田(Dr)、富永(E.Gt)の構成は十分にこなれている。

実はここで気づいたのだが、1998年あたり武田参加の直後からしばらくは「ドラムが走りすぎている」という印象がとても強かった。特にライブ。ドラムは早すぎ、他のメンバーはしばしばそれに振り回されたり置いていかれたり、といった感じ。
この完全盤を聞いて思ったのは、ドラムに追いついてきている、ということ。それで、慌ててリサイクル収録の新宿駅で待ってたと聴き比べてみたが、テンポもアレンジも演奏のこなれ具合も、全然違う(当たり前か)。「うわー、バンバンうまくなったねぇ(←失礼(笑))」というのが正直な感想だった。
武田(ドラムス)の参加は間違っていなかったのだ。
また、富永のギターは安達のギターや杉原のギターとは全然違う。うまいヘタの問題ではなく、音色が違うのだ。ムードギター的というか、富永のギターは1960〜70年代的な音がする。君のこと僕のことで見せたムーディな雰囲気というのは、富永のギターだから出せた音だ。富永の参加もまた、バンバンの時間を少し進めたのだと思う。

 

 メジャーになると、ジャイヴはもう聴けなくなっちゃうのかなとか、ブルースではなくなっていくのかなとか、アコースティックな音が懐かしいなとか、このままロックバンドになんのかな(笑)とか、バンバンヘッズの頭の中にはいろいろな期待と不安がよぎる。
 たぶん、これで終わりというわけではなくて、またメンバーチェンジがあったり、使う楽器が変わったり、バンバン自身が求める曲が変わったりするんだろうと思う。それが気に入れば予約してでもCDを買うし、それほどでもなければだんだんライブからも足が遠のく。それだけのことではあるんだけど、バンバンの最大の魅力が変わらなければ、これからもライブに足繁く通い、CDをフル回転させながら仕事をしたりするんじゃないかなぁ、と思う。

 バンバンの最大の魅力というのは、このページを最初に作ったときにも書いたことで、僕がバンバンを誰かに勧めるときの最大の根拠であり、僕がバンバンをやめられない最大の理由でもある。
 バンバンはどんな音楽をやっててもいい。ジャズの歌詞にフォークみたいな歌詞を付けてアコースティックで歌っていても、ビッグバンドをやっていても。そういうことを楽しそうにやっている姿というのが、バンバンバザールの最大の魅力だと思うのだ。いい音とか、かっこいいボーカルとか(笑)、そういうのだけだったら、他にもこれからもいろいろ出てくるだろう。
 バンバンは音を楽しんでいる。
 客席の僕ら以上に彼ら自身が演奏を楽しんでいる。
 そう言う姿をこれからもずっと見られるんだったら、僕はやっぱりまだまだずーっとバンバンヘッズを名乗り続けるんじゃないかなー、と。そう思いました。

(文中敬称略)

2000年12月4日


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