イルカは美味しい食べ物です!

Do you know?
Whale(dolphin) is very delicious food !


 

Q.イルカって食べられるんですか?

A.静岡では……というか、少なくとも静岡県東部では食べます。美味しいです。

他に、和歌山県太地町、宮城県気仙沼市、千葉県和田町、沖縄県の一部でも食べるそうです。

 

 

●イルカの思い出

 かつて沼津港にあったイルカの骨を処理する施設が、沼津港の施設拡張で1990年代末に潰されてしまったので、今は沼津港に直接イルカが水揚げされることはなくなりました。しかし、かつてはシーズン(だいたい12月から1〜2月くらいまで)になると、沼津港の競り市場にイルカがずらーっと並んでいました。
 魚河岸で働いていた親父に連れられて、ずらりと並んだ美味しそうなイルカたちを見に行ったものです。

 幼少のみぎり、水族館で芸をしているイルカを見ながらうちのお袋が親父に

「お父さん」
「んー、なんだ」
「あのイルカ(と、芸をしているイルカを指す)、何人前くらいかしらね」
「そうだな。130人前くらいかな」

 という会話をしているのを聞いてから、僕の中ではイルカは「可愛くて芸をする頭のいい、しかも美味しい生き物」ということになってます。クジラが食えなくなったって平気です。イルカがいるし。スーパーなんかに出回っている「特価品・クジラ肉刺身用」というのはほとんどイルカ肉なんで、僕はばっちりOKです。

(註1)ちなみに、ここでの「スーパーのクジラ肉は実はイルカ肉」というのは1990年代の話(元のテキストは90年代に書かれています)。最近スーパーに並んでいるクジラ肉の多くは「ツチクジラ」という沿岸小型鯨類で(小型と言っても12〜15mくらいあります)、ツチクジラはよく知られたマイルカなどと同様にクチバシ(口吻)がある歯鯨類です。このため、ツチクジラの外見を見てイルカと思い込んでいる人もいるようです。
 ツチジクラの旬は夏頃ですが、次第に北上していくので水揚げ港や水揚げ時期も移動していきます。ツチクジラは日本沿岸での捕鯨対象になっている鯨類ですが、ゴンドウクジラと同様にIWCの管轄外にありモラトリアム対象には指定されていません。代わりに農水省の管理下にあって漁獲量・漁獲時期が制限されており、野放図な捕鯨対象になっているわけではなく、管理されています。
 IWCの管轄外にある鯨類については、全般に近海沿岸での捕鯨漁獲については農水省の管理下で資源量の管理がされています。
 つまり「乱獲によって資源数が減少を続けている」という批判は、かなり古い情報に基づいた誤った批判であって、「日本人はチョンマゲをしているから野蛮」というのに等しいです。

(註2)静岡東部、伊豆地方ではイルカ肉はスーパーに並んでいるのは本当。2000年代以降からは産地や原料の厳密な表示が義務づけられているので、イルカをクジラと表示して売る店はほぼ駆逐されています。
 一方、ゴンドウクジラ(地域によってはゴンドウイルカ、オキゴンドウと同一視されている土地も)などのように、体長2〜5mの最小サイズのクジラをイルカではなくクジラとして売る場合など、実態はほとんどイルカだけどクジラ、というのが必ずしも間違いではない場合もあります。
 オキゴンドウはマイルカのようなクチバシがないため、比較対象がない外見を見るとクジラ、しかしよく言われる「5m以上がクジラ、それ以下がイルカ」という分類だとイルカに含まれてしまいます。
 実際、イルカ扱いされている地域もあり、非常に曖昧というお話。

VOCALOID食堂に入ってみた(イルカ編)
http://www.nicovideo.jp/watch/sm2641398

鯨と鮪とハタハタとモラトリアム
http://t.co/Ef2Vq3h2
※ハタハタのモラトリアムに見る、資源量回復の実例

 

 

●イルカを食べる地方

 冗談はさておき、イルカを食べる地方というのは、日本国内でも少なくなってきました。静岡の他には、三陸方面(岩手)、四国方面(高知)、北陸方面(能登のほう)、山梨県の一部でもイルカ料理があるらしいです。国外ではフロリダあたりにイルカ料理を食べさせてくれるレストランがあるとか。
 沖縄で「イルカ料理」を掲げているドライブインが存在するらしいです。水産関係者の父の話では、太平洋側なら関東から瀬戸内海あたりまで食べるのではないか、とのこと。
 千葉県銚子市でもイルカを食べる、という情報をいただきました(2005/6/7)。紀伊、静岡、千葉はそれぞれ捕鯨、イルカ漁という繋がりの他に、鰹節(鰹漁)という繋がりを持っています。これは、紀伊方面(或いは四国も?)の漁師が黒潮で漂流し、静岡、千葉まで流されて漂着したことと無関係ではないように思います。漁師は鰹のような大型回遊魚も捕れば、同様にイルカや鯨も捕ったと考えるのが自然です。和歌山の太地、静岡の川奈、千葉の銚子や和田は、すべて繋がっている、ということでしょう。

 イルカ料理は、分類上はゲテモノ料理ではありません。静岡・伊豆半島の縄文時代の遺跡からイルカの骨が発掘されたり、イルカの土偶が発掘されたりしているあたりから、あのあたりではかなり古くからイルカを捕食していたことが確認されています。

 近代ではどうなのかというと、僕が子供の頃(少なくとも上京してくる前までは間違いなく。んだから、だいたい10年前後前)までは、魚屋以外にスーパーやデパートの魚売場なんかでもフツーに「イルカ」として売っていました。

 上記・山梨でイルカ料理が食える理由として、魚が捕れない山中でのタンパク質補給に獣肉(でも、陸獣じゃないからモモンジ扱いではないわけね)が用いられたことなどに由来するのではないかと思われます。同じ理由で山梨には煮貝というアワビなんかを煮込んだ名物料理がありますが、これも海岸で煮た貝を山梨まで馬で(昔は)運ぶ途中に熟成されて、海沿いで食うより美味くなったとかいうのが発端の料理だったりします。

イルカについて
http://d.hatena.ne.jp/azuki-glg/20100328/1269729128
※太地漁協が2003年に発表した声明の紹介。

 

 

●イルカ料理

 「イルカ料理」でサーチエンジンを検索すると、ほとんどヒットしない上に「うまいものではなかった」「ゲテモノ」「食べる気になれない」などという否定的な意見ばかりが目に付き非常に腹立たしいのですが(笑)、それはちゃんとした調理法で作られた、旬の美味しいイルカを食べてないから。イルカは全身運動で泳ぐ海獣なので、全身の筋肉に血が行き渡ってます。なもんで、血抜きをしっかりしないと血生臭いです(好きな人にはそれがたまんないわけですが)。

 イルカ料理のレシピにはいろいろありますが、「刺身」「レモンでソテー」「みりん干し」「煮込み」などがあります。僕のお薦めはみりん干しと煮込みです。特にみりん干しは、酒の肴にサイコー!(我が家には、ちょっとだけイルカの備蓄があります。ミンククジラも定期的に確保)

 しかし、イルカでいちばん美味いのはやっぱり煮込みですねぇ。特にイルカの美味いところは「皮」です。外側の皮と皮下脂肪のあたりの、ゼラチンがクニクニしてるところ。ここをもっとも美味しく食べる調理法が煮込みなわけです。

 

 

●イルカの煮込みの調理法

  1. まず、イルカ肉。
     できれば、骨付きか皮付きが最高です。これを用意します。ちなみに、東伊豆の城ケ崎あたりでは今もときどきイルカ漁を行っていますので、そっち方面では手に入るかもしれません。イルカ漁は複数の漁船によって、群を湾に追い込む「追い込み漁」です。
  2. 下ごしらえ。
     血抜きをしっかりやることですね。水にサラしておけばよし。
  3. その他の野菜。
     アク抜きしたゴボウ、人参、こんにゃくを、適当な大きさに切ります。笹ガケにしたり、乱切りにしたりいろいろです。
  4. イルカと野菜を煮る。
     味付けは砂糖(みりんじゃないらしい)、醤油、塩適当。ダシは特に取らない。
     煮込み時間も適当。

 冷えてから食います。トロっとして、サイコーに美味いです。
イルカだけなのに、なんでこんな複雑玄妙な味に!?というくらい美味いです。

下拵えの否定
http://t.co/9rIYe4fe
※イルカは下拵えが命で、これに失敗すると大変不味くなります。

イルカの調理法
http://t.co/lYJeeLvE
※静岡での一般的な煮込みの作り方子細編。

 

 

●イルカは絶滅に瀕していない

 反捕鯨運動は鯨の絶滅阻止(資源枯渇)を動物愛護を同列に扱っていますが、ナガスクジラとミンククジラのように繁殖サイクルや生態が違う鯨類を、モラトリアムの名の下に一緒くたに扱うことで、却ってミンククジラの激増とそれによるナガスクジラの餌の枯渇によって、ナガスクジラの個体数が圧迫される……といった問題も引き起こしています。餌が同じで繁殖力が強く小型のミンククジラが短いサイクルで増えることで、長命で生殖サイクルが長いナガスクジラが餌場を追われ、数が増えないという具合です。
 その意味でも、鯨についてはミンククジラを適度に間引いていくことが重要で、「間引いても個体数全体が減少しない規模」を探るというのも「資源維持のための調査捕鯨」の重要な目的でもあります。生態調査や個体識別だけが調査捕鯨の目的ではなく、「何頭までなら採っても繁殖数を追い抜かないか?」というのを調べるのがIWC科学委員会の委託を受けた日本の調査捕鯨の目的であるわけです。

 鯨と同一種であるが故に、イルカも絶滅に瀕していると考えられがちですが、イルカに関しては絶滅種ということはありません。
 昨今、しばしば「イルカの群れの暴走・迷走による漂着」がニュースになることがあります。ミンククジラなどの小型鯨類なども、群れを成して湾や浅瀬に上がってしまい、戻そうとしても戻らない……という話題を聞いたことがあるのではと思いますが、あれは自然現象や地震の前触れを人間に知らせるためとか、そういうファンタジックな理由によるものではありません。
 原因を調べるための調査捕鯨が妨害を受けて滞っている側面もあるので、これが正しいという正確な説を挙げることはできませんが、考えられるのは餌の枯渇(個体数が増えすぎている)とそれに起因する縄張り争い、疾病などが考えられるそうです。
 あまりニュースにはなりませんが、イルカや沿岸の鯨による船舶の進路妨害というのも実は深刻な問題です。貨客船/旅客船やホエール/イルカウォッチングなどでは船の側にイルカが寄ってくると「遊んでもらえる」と思われている、と思い込んで(面倒なメタ心理ですが)喜ばれますが、これらのイルカを漁船が撥ねてしまう、或いはより大きめのクジラと衝突することで海難事故に繋がるケースもありました。

 また、イルカ、クジラは24時間365日休まずに操業を続ける漁船のようなもので、示し合わせての漁業制限はしてくれません。IWCの管轄外である沿岸鯨類のうち、特に個体数の多いイルカについては、漁業害獣として定期的な駆除が必要である、という側面もあります。日本の漁業はイルカという競争相手との生存競争でもあるのです。
 イルカは鰺、鰯、鯖など根付きの沿岸小魚類や烏賊類など、「庶民の食卓に上がる海産物」を主な餌としています。このため、餌を追って定置網に侵入、網を自力で破ったり、或いはグリンピースやシーシェパードなどの環境保護動物愛護テロリストによって漁網を破られたりします。
 漁業にあっては漁網は生命線でもあり、これが破られるとその後暫く修繕が終わるまで漁ができません。漁ができない=収益が一切上がらなくなるわけで、漁業関係者にとっては死活問題です。

 単に害獣として駆除して廃棄するのと、それを丹念に料理して食べるのと、日本人ならどちらがよりよい選択肢か理解は容易いと思っています。

 

鯨と鮪とハタハタとモラトリアム
http://t.co/Ef2Vq3h2
※ハタハタのモラトリアムに見る、資源量回復の実例

イルカ食の啓蒙と環境テロリスト・シーシェパード批判
http://togetter.com/li/286130

 

 

●だから、イルカを食べよう

 クジラが食えなくなっても、僕らはまだまだイルカでいけます!
 イルカは減ってないんだから捕食しちゃったっていーじゃんかよ!>シーシェパード&グリーンピース
 イルカは定置網を破るんで、沿岸漁業の害獣なんだぞ!(T_T) 少なくとも捕り捨てしてんじゃなく、ちゃんと美味しく食べてんだから文句は言わさないぞ!(T_T)

 捕鯨して油だけ絞ってクジラの死体を捨ててたくせに、今度はクジラを守れとかいってスタートレックまで持ち出しやがるアメリカの妄言や、旧約聖書まで持ち出すシーシェパードに騙されてはいけません!

 日本人なら! イルカを食べましょう!

 

 

 

 ……あっ! こら離せ! オレは日本人だぞ! イルカを(食べたいほど)愛する静岡県人だぞ!
 イルカを食べて何が悪い!
 離せ! オレは、オレはイルカが大好きだああああ!

 

(伊武雅刀風に引きずられながら退場)

 

 

 

 

 


文責:AZUKI(1967年生まれ静岡県沼津市出身)